歯根の消毒(根管治療)
どんなに小さな歯も、その1本1本には心臓からは血管が、脳からは神経が、骨髄からはリンパ管が出入りしています。それら歯の内部の神経脈管を総称して歯髄(しずい)と言い、一般的に歯の神経と呼ぶものです。歯髄があるからこそ血が巡り、痛みを感じ、バクテリアが近づくと免疫応答が生じる、文字通り歯は生きている臓器の一つなのです。
歯髄組織は細胞の集まりなので、常に栄養や酸素が運ばれています。代謝を繰り返しながら外部の刺激によって様々な反応を示します。エナメル質は一度傷ついたら再生しませんが、象牙質は神経(歯髄)のおかげで年々内部から厚みを増してゆきます。つまり神経(歯髄)を残すということは、歯が生き続けるということです。
神経を抜かなければならないときとは…
むし歯の進行スピードは口腔内の状況によってまちまちですが、唾液の作用が及ばない深部に及ぶほど、その後の広がりは加速します。歯髄が健全でもバクテリアからの攻撃を完全に防げるわけではありません。いよいよバクテリアによって歯髄細胞に炎症が引き起こされると、むし歯の痛みを感じ始めるのです。
冷たいものが軽くしみるくらいなら歯髄のダメージは小さく、詰め物をするだけで歯髄に生じた炎症は消失します(可逆的な炎症)。ところが痛みが激しくなるほど、歯髄が受けるダメージは元に戻らない(不可逆的な炎症)である可能性が高くなります。冷たいものだけでなく熱いものにもしみる、ズキズキした痛みが長く続く、噛んだ時にも痛みを感じるなどの症状が出たとしたら、歯髄の保存はほぼ不可能でしょう。歯そのものではなくて、いわゆる神経を抜く治療をしないとならないのです。
理由があるからこその根管治療
歯を残すための苦渋の選択
歯の神経(歯髄)をとってしまうと歯の寿命は極端に短かくなります。それでも歯髄を取らなければならないというときとは、歯髄自体が壊死しつつあるか、歯髄がすでにバクテリアの住みかになっている場合です。どちらの状況でもそれを放置していると、膿が溜まりさらに激しい痛みが襲ってきます。治療が遅れると歯根の内部全体にバクテリアが広がることになり治療は複雑化し、治療が終わっても歯根は余計に脆くまります。結局は抜歯する時期が早まることにもなるのです。
歯科医師は神経をできるだけ保存しようと意識しながら治療します。しかし上記のような理由で、神経を残しておくことの方が患者さんの健康を害すると診断したときは、頭を切り替えてすぐに根管治療に臨まなければなりません。
①根管治療
通院1〜4回
感染した歯髄やボロボロになった象牙質、たまった膿などを丁寧に取り除き、清掃と消毒を繰り返します。
②根管充填
通院1回
清掃・消毒した歯根管に防腐剤を詰めて密閉することで、周囲への感染を防ぎ、歯の機能を意地させます。
③補綴治療
通院2〜3回
土台になる柱を作って、被せ物(クラウン)を装着します。咬み合わせに問題がなければ治療は終了です。
④定期検診
通院3ヶ月〜半年ごとに1回
根管治療を施した歯がしっかり機能しているかどうか、再発していないかどうか、定期的に確認します。
実は専門医が存在するほど複雑な根管治療
通常前歯は歯根1本、歯髄1本ですが、奥歯の根は数本に分かれていて、なおかつ歯髄の数は歯根の数よりも多い場合もあります。
根管内は別れ道だらけの洞窟、まるで迷路です。治療を急ぐと確実なクリーニングができないばかりか、根管内を余計に傷つけてしまう恐れもあるのです。根管内の状況によっては難易度がさらに増して、根の治療だけでも治療の回数はかさみます。
このレントゲン写真に写る歯根の湾曲は非常に強く、治療器具を挿入すらことすら困難です。根管内面全体のクリーニングや、その後バクテリアが繁殖しないように先端まで詰め物をするという理想的な治療はほぼ不可能です。根管治療の専門医の力を借りないとならないかもしれません。
高坂デンタルオフィスでは、通常の保険治療では難易度が高いと判断した場合は、自費診療専門の専門医による根管治療もご提案いたします。より高度で確実な治療をご検討される方はぜひお申し出ください。