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「顎位」って何?

噛み合わせを考えるとき、どうしても避けられない概念が顎位(ガクイ)です。単語の意味としては決して難しくはなく、上顎骨からみた下顎骨の位置、と解釈すれば十分です。一般的に「顎関節や噛み合わせがずれている」といわれる状態を、「顎位がずれている」と表現します。

 

しかしこの「顎位」は診査をすれば正解がわかるかというと、実はそうではないのです。

 

「顎位」が安定しているということは、上下の歯の接触によって下顎がずれないで、かつ患者さんご自身が噛むときに違和感を感じていない状態です。下顎の収まり方や噛み合わせは、⻭の形や骨格、お口の状況により一人ひとり異なります。また患者さんがずれた噛み合わせに慣れてしまって、違和感を感じていない事もあります。このため正解の顎位がどこなのか、あらかじめ特定することが難しいのです。

正しい「顎位」を見つけるには、咬合調整や仮⻭の作製、矯正治療などの仕事をしながら、患者さんの顎がどこに行きたがっているのかを観察していくという地道な作業が必要です。治療中の患者さんの噛み位置の変化を観察してクセを読みながら、正しい顎位に導きます。宮大工さんは、建材である材木の特徴や性質を読みながら寺や塔を建築します。だからこそ、1000年以上も朽ち果てない木造建築が現在も存在しているのです。患者さんのかみ合わせの個性を勘定に入れずに歯科理論を押し付けても、決してうまくいかないでしょう。

嚙み合わせはいいも悪くも日々少しずつ変化していきます。時間をかけて悪くなったとしたら、それを良くする為にも時間が必要です。

顎位には答えがありません。だからこそかみ合わせ治療には、体の適応変化を追いかけながら顎がどこにいきたがっているのかを観察する視線が必要です。

顎位なくして語れない治療もある

矯正治療・補綴治療・咬合調整は、顎位を無視しては絶対に成立しません。奥⻭を治療したのに前⻭の噛み合わせに違和感が出てきた、前⻭を治療したのに奥⻭でかめなくなった。そしてさらに残念なことは、時間と費用をかけた矯正治療の後に、食事しにくくなったり顎が痛みすくなったり、このような不快症状を訴える方もいらっしゃいます。局所の治療はうまくいっていたとしても、全体との健全な関係性が崩れてしまうと様々な苦痛に悩まされることがあるのです。

 

「顎位」の診断は非常に重要ですが、多くの⻭科医師が苦手に感じているというのが現状です。しかし私たち歯科医師は、「顎位」と正面から向きあわなければならない場面があります。先に述べたように「顎位」には答えがありません。しかし、それを無視しては決して成立しない治療もあるんだ、ということもお伝えいたします。

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顎位1

顎位とは?

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