インプラント治療 1
インプラント治療
歯科における置換医療の最たるもの
いうまでもないことですが、歯は二度と再生しない臓器です。むし歯治療が終了したとしても、そこは人工物に置き換わっているだけなので生体にとっては本当の治癒とはいえません。したがって歯科医療とは、人工物と生体組織との調和を追求しなければならない分野なのです。
通常、修復材料に金属やセラミックスが使われる場はあくまでも「体の外」です。被せ物が歯肉に炎症を起こさせないように精密な仕事が求められますが、インプラントは、チタン製の人工歯根を生きた骨細胞の中に埋め込む治療なので、もしも何か問題が生じた場合は周辺の骨が失われていく可能性があります。インプラントはむし歯にはなりませんが、問題が生じた時のリカバーは非常に困難なので、生体と調和しているかどうかの判定はよりシビアです。
治療計画上の注意点
健全に骨と密着したインプラントは、天然歯よりもはるかに強い存在となります。インプラントと噛み合わせが天然歯と調和していなければ、天然歯にダメージを与える存在にもなりえます。特にインプラントとジルコニアクラウンの組み合わせは、噛み合う歯に過剰な咬合力を与えやすいので注意が必要です。逆に、インプラントの方が長持ちしなかったという話も耳にします。歯周病リスクの把握も、インプラントの治療計画には重要です。
インプラント治療後のリスクは天然歯とほとんど同じ
人工物であるインプラントは、天然歯におこる問題は一切生じないとお考えになる方もいるかもしれません。確かにインプラントはむし歯にはなりませんが、
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歯周炎の問題
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噛み合わせの問題
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インプラントが割れる問題
これらの問題は無視できないのです。治療計画の段階でできる限りそれらのリスクを把握しなければなりません。
もしも天然歯が失われた原因が歯周病だった場合、あらかじめの歯周病治療なくしてインプラント治療はできませんし、その後のメンテナンス、ご自分でのセルフケアーもよりシビアに取り組んでいただく必要があります。定期的なメンテナンスは、インプラントを長期間使用するためにはとても重要です。
他院で治療を受けた症例です。もともと⻭周病のリスクが⾼かった⽅ですが、事情があってメンテナンスに通えずに数年間が過ぎました。
インプラント周囲炎で⻣が失われ、残念ながら撤去に⾄りました。
噛み合わせの問題で歯を失った方は、天然歯の噛み合わせの問題を解消しなければなりません。そうしないと、インプラントが残りの天然歯を壊していく原因にもなりかねないのです。
そして、日頃からの歯軋りや強い噛み締め癖のせいで歯を失った方も、インプラント治療には慎重にならないとなりません。強い噛みしめの力が将来インプラントを破壊してしまう可能性があるからです。力の問題は簡単には解決できません。歯軋りや日中の噛み締めが強い方には、マウスピースを使用していただくことになるでしょう。
対策が難しい力の問題
力の問題を100%解決することは不可能です。夜間にマウスピースを使用するとしても、たまには忘れる時もあるでしょう。日中にも同じような力を無意識にかけてしまう方もいらっしゃいます。だからといって一日中マウスピースをつけっぱなしということは現実的ではありません。
インプラントにセットする被せ物の素材を検討するところからインプラント治療は始まります。定期検診では噛み合わせのチェックはもちろん、マウスピースがちゃんと機能しているかどうかのチェックもいたします。
手術中、手術後のお痛みについて
インプラントは特殊な治療なので、手術時は特別な麻酔法が必要になるのかと思われる方も多いかもしれません。しかしごく少数(1~3本)のインプラントの手術の場合には、普通のむし歯治療と同じ麻酔をいたします。手術時間が長くなることが予想される場合は、精神をリラックスさせるため、麻酔科医のもと点滴を取りながら静脈鎮静法を併用します(自由診療)。恐怖心を感じないまま手術時間も短く感じられるでしょう。
手術中の痛みは基本的にありません。手術が終わって麻酔が覚めた時は多少疼く程度の違和感はありますが、痛み止めを飲んでいただければ通常とほぼ変わりないくらいに落ち着きます。抗生剤もお出ししますので、服用してくださればほとんど腫れることなく、治癒も早まるでしょう。
静脈内鎮静法とは?
静脈内鎮静法は、腕の静脈に鎮静剤を点滴で投与する麻酔です。
意識が無くならない「ウトウトした状態」に薬の量をコントロールすることで、治療中の痛みや不安感・恐怖心を取り除き、リラックスした状態で治療を受けることができます。
型取りが2回の理由
治療の流れ
カウンセリング
カウンセリングにて、患者さんのお悩みやご希望を伺った上で、診断結果から治療が必要と判断した場合にインプラント治療をご提案いたします。
CT検査
インプラント治療は骨の状態やによってはお勧めできない場合もあります。
骨の状態、歯周病のリスク、噛み合わせのリスク、外科処置のリスク、費用、これらに極端なマイナス要因がなく、患者さんがお望みになれば、私からもインプラント治療はお勧めいたします。
顎の骨の状態を確認し、インプラント治療が可能かどうか判断するためには、CT検査は必須となります。
インプラント一次手術
歯ぐきを切開し、骨の中にインプラントを埋め込みます。
手術後はインプラントが2〜3ヶ月の治癒期間を設け、骨とインプラントを完全に密着させます。
インプラント二次手術
インプラントと骨がしっかり密着した後、再度歯ぐきを切開して仮の土台(ヒーリングアバットメント)を装着します。
インプラントの手術も1回で済ます場合もあります。時間を短縮できたり粘膜を切開する回数を減らせる利点はありますが、高坂デンタルオフィスでは、インプラントがより確実に骨と密着するように、基本的に2回手術法をお勧めしています。
型取り
2次手術から1ヶ月後に最初の型採りです。患者さんごとの歯ぐきの形に合わせてカスタムアバットメントを作製します。
カスタムアバットメントを装着したら2回目の型採りを行い、クラウン(被せ物)を作製します。
クラウンセット
2週間ほどでクラウンが出来上がります。噛み合わせを整えた状態でセットして、インプラント治療は終了となります。
その後の定期健診も重要です。インプラント周囲歯肉と噛み合わせをチェックいたします。噛み合わせは常に変化してゆくものなので、必要に応じてバランスを整えるための微調整をいたします。
1回の型採りで、土台とクラウンを同時に作ることは可能です。治療の回数と期間は短縮できるので、患者さんには嬉しいはずです。実際に、1回の型採りでクラウンを作る歯科医院がほとんどです。
しかし先を急いでステップを省略することも危険な場合があります。
プラークが溜まりにくく、歯ぐきに炎症を起こしにくいクラウンを装着するためには、先に歯ぐきの形を考慮した土台を作る必要があります。その後、被せ物を作るための型を新たに採るのです。回数は増えますが、より良い結果を生むための配慮だとご理解ください。
土台とクラウンをそれぞれ別個に型採りするからこそ、技工士さんが作製する技工物の適合レベルがより高いものになるのです。