top of page

インプラント・セラミックスクラウン・ゴールドクラウンの複合症例

60代 / 女性
2020年11月症例

1.jpg
2.jpg

初診時、右下奥歯の痛みを気にして来院されました。すでにゴールドクラウンのブリッジ(LR-5〜7)が装着されていましたが、不幸にも一番奥のLR-7にカリエスによる痛みが発症しました。治療のために、ブリッジを撤去しなければならない状況でした。

これらから皆様にご覧いただくのは、「審美歯科治療」の症例となります。

インプラント治療の検討

ブリッジの欠点

ブリッジの欠点はいくつかありますが、問題が発生したときに低予算でリカバーしにくいことがその一つです。1カ所に問題が起こった場合、他が健全でも全体を壊して外さないとむし歯の治療はできません。

背丈が低い奥歯の場合は接着面積が不足するので、どうしても物理的に外れやすい構造になりがちです。さらに奥歯は噛み合わせの力がかかる部位なので尚更です。手前のクラウンはくっついていることもしばしばで、外れたことに気づかないまま奥歯のむし歯だけが大きくなってしまうパターンが非常に多いです。

インプラントの活用を検討

今回、最終的には新しいブリッジをセットしなければなりませんが、はたして今までと同じブリッジを被せても、もしかしたら将来また同じ問題が生じるかもしれなません。噛み心地が良く、再治療の可能性をできるだけ減らすために、インプラントを活用する治療計画を検討することになりました。

LR-6 部の欠損に対する今回の治療オプション

3.jpg

1  LR-5〜7までのブリッジ

 (今までと同じ)

2  LR-6をインプラント治療
     LR-5とLR7は単独クラウン

LR-6 をインプラントにすれば、LR-5、LR-7 すべてに単独のクラウンを被せることができ、後に問題が発生する確率を少なくできる。

インプラント治療の検討
ブリッジの欠点
インプラントの活用を検討
治療オプション

治療方針の決定

インプラント治療はその方の条件によってはお勧めできない場合もあります。

骨の状態、歯周病のリスク、噛み合わせのリスク、外科処置のリスク、費用、これらに極端なマイナス要因がなく、患者さんがお望みになれば、私からもインプラント治療はお勧めいたします。

特にこの方の場合はLR-6にインプラントを活用すれば、その前後のLR-5とLR-7に単独のクラウンを被せることができるのです。これが修復装置にとってはとても大きなメリットとなり、ブリッジよりも将来の再治療のリスクは激減します。

治療方針の決定

インプラントの利点

インプラントは失われた歯を補うための有効な手段の一つです。ブリッジのように前後の歯を削らずに、単独で欠損修復が可能です。むし歯の治療も健全なエナメル質を削るという必要悪の側面があります。それを回避できるインプラントは、欠損を補うというだけでなく、結果的に他の天然歯の寿命を伸ばすことにもつながるのです。
ブリッジの再治療の回数が多くなると、やがては神経を取ることになり、さらに歯根が割れて最終的に抜歯に至る。その時はすでに部分入れ歯の選択肢しか無くなっているかもしれません。健全な歯の寿命を治療によって短くすることのないように、生涯取り外し式の部分入れ歯を使うことにならないように、インプラントは非常に有効に有効な手段です。

インプラントの利点

診断

安心、安全なインプラント治療のためには、骨の状態の把握が重要であることはいうまでもありません。単純に、インプラントを埋込むことができる骨がそこに存在しているのかということです。インプラントに十分な骨の高さと厚みがあるのか?それを確かめるためにCTレントゲンの撮影は不可欠です。

4.jpg
5.jpg
診断

治療経過

ステップ1 インプラント1次手術

6.jpg

歯ぐきを切開して骨の中にインプラントを埋め込んだ数日後のレントゲン写真です。

この時点からインプラントが骨に密着するまで2〜3ヶ月の間、本体は歯ぐきの中で眠っています。切開した傷口は完全に塞ぐので、次のステップまではインプラントが埋まっていることはお口の中を覗いてもわかりません。

ステップ2 インプラント2次手術

インプラントと骨がしっかり密着した頃を見計らって、2回目の手術を行います。それまで粘膜の下に隠れて完全に眠っていた状態のインプラントに、仮の土台を立ててインプラントを粘膜から露出させます。
インプラントの手術も1回で済ます場合もあります。時間を短縮できたり粘膜を切開する回数を減らせる利点はありますが、高坂デンタルでは、人工歯根がより確実に骨と密着するように、基本的に2回手術法をお勧めしています。

ステップ3 土台の型採り

7.jpg

2次手術が終わった1ヶ月後には、ようやく型採りが可能になります。ここで最終的なインプラントの構造をご説明します。

1回の型採りで、土台とクラウンを同時に作ることは可能です。治療の回数と期間は短縮できるので、患者さんには嬉しいことのはずです。おまけに治療費も多少は節約できるかもしれません。

しかし先を急いでステップを省略することも危険な場合があります。

プラークが溜まりにくく、歯ぐきに炎症を起こしにくいクラウンを装着するためには、先に歯ぐきの形を考慮した土台を作る必要があります。クラウンの形を理想に近づけるためには、目に見えない土台から丁寧に作り込まなければなりません。その土台との適合を最高レベルにするために、型採りは2回に分けたいのです。回数は増えますが、より良い結果のための配慮だとご理解ください。

ステップ4 新たな問題

8.jpg
9.jpg

インプラントの治療の最中に新たな問題が発生しました。手前の歯LR-5の神経が壊死を起こし、歯根の中に膿が溜まりつつある状態であることがわかったのです。それまでのレントゲン写真を見比べると、LR-5の歯根先端にある黒い影が大きくなっていることがわかります(図8・図9の赤丸部分)。

根管治療をしないで修復物を被せると、その直後に激しい痛みが出てもおかしくない状態です。急遽、根管治療を開始しました。

10.jpg

図10は根管治療の終了後のレントゲン写真。この段階ではまだ歯根の先端に膿が溜まっていることを示す黒い影がまだ残っている(図10、赤丸)。

余談ですが、神経のない歯は脆くなるのでカリエスリスクが高まります。ブリッジを被せた場合、後に起こりうる2次カリエスのリスクが余計に心配になります。今回LR-6にインプラントを選択したことがLR-5のカリエスリスクを下げ、結果的に延命にもつながるもしれません。

ステップ5 クラウンセット

11.jpg

精密に型採りをすれば、技工士さんは見事な適合レベルで修復物を仕上げてくれます。適合がいいとバクテリアも繁殖しにくくなりますが、歯肉が赤く炎症を起こしていないことがその証です。

12.jpg

レントゲン写真でもクラウンの境目に隙間、段差が一切ないことがわかります。

根管治療をしておよそ5ヶ月後のレントゲン写真です。LR-5の歯根先端の黒い影が消失しました。(図12、赤丸)根管治療によって炎症がなくなったことの証です。

治療経過
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5

素材の選択、デザインの工夫

この方は前歯の噛み合わせの関係で、奥歯にかかる力の負担が大きくなりやすい特徴がありました。本来ならば奥歯にセラミックスはお勧めしにくい噛み合わせだったのです。以前のようにメタルクラウンの選択が妥当なので、当初は同じメタル素材での再治療を考えていました。

しかし話をお聞きしていると、白く自然に見える歯を被せたいというお気持ちを失っていなかったことを察しました。この方はまだ60代です。今後の人生を謳歌するにはまだまだお若い年齢です。自然観の高いセラミックスを活用するために、リスク回避の工夫をいたしました。

一番力がかかる歯は1番の奥歯です。セラミックス治療には最も気を使う場所なのですが、LR-7の噛み合わせを確かめると、噛み合っている上の歯(図15、UR-6)はすでにゴールドクラウンが装着されてます。ここがゴールドクラウンだったからこそ、LR-7はセラミックスでも許容できました。
後にUR-7も治療をしましたが、頬側の一部分に白い材料を貼り付けたので(図13、青丸)、外観のメタル色は全く気にならなくなりました。

天然歯には歯根膜というショックアブソーパーの役目を果たす組織がありますが、インプラントにはありません。インプラントは骨と直接的に強力に接合しているので、天然歯のような力の逃げ道がないのです。LR-6(図14)はそんなインプラントの上に装着されます。対合してる歯は天然歯ですが、心配は拭いきれません。

ここにはオールセラミックスクラウンではなくて、メタルボンドという種類のセラミックスクラウンを選択しました。最も壊れやすい部分(図14、青楕円部分)に金属を露出させるデザインにすることにより、セラミックスの最初の一欠けを防ぎやすくしたのです。

17.jpg

LR-5 (図14、LR-5)も力の負担が集中しやすいところだけ、高強度のセラミックスを露出させ、全体が壊れにくくなるように設計いたしました。この工夫は一番奥のLR-7(図14、LR-7)にも施しています。

このHPでも記載していますが、硬すぎる修復物はそれ自体は壊れませんが、一方で歯根が壊れやすくなる可能性もあります。セラミックスクラウン全体を硬くすることは、他の問題を招く恐れがあるのです。

少し心配しすぎかもしれませんが、噛み合わせの問題はいつも予想外の場面で現れます。セラミックスの美しさが長持ちするように、患者さんごとに個別の工夫を治療に生かしたいと思っています。

素材の選択、デザインの工夫
治療概要

治療概要

治療費

【インプラント1次手術】

220,000 円
【インプラント2次手術】

11,000 円

【ファイバーポスト】

11,000 円

【仮歯】

3,300 円 × 4 = 13,200 円

【ゴールドクラウン】

132,000 円
【セラミックスクラウン】

220,000円(インプラント上部構造として) 
【オールセラミックスクラウン】

176,000 円× 2 =352,000 円

※治療費は全て税込の価格となっております。
※費用は歯・口腔内の状態によってことなります。

治療担当

歯科医師 高坂昌太

関連症例

13.5-a.jpg

上顎前歯4本をセラミックスで治療した審美症例

50代 / 女性

bottom of page